ある若手技術者のエピソード
その昔、ある若手技術者がいた。いや、技術者というよりはそのタマゴに近かったかも知れない・・・。仮に名前を「K」としよう。
Kの職場は、某家電メーカー。誰もが知っている大手企業だ。
Kの配属先は、洗濯機の開発を行う部署。当初から開発設計業務を希望していたKにとっては、正に望み通りの職場。
しかし、喜び勇んで出社したKに与えられたシゴトは、洗濯機の試験評価。
ただ、試験評価と言えば聞こえはいいが、実際にやったことは・・・洗濯機のフタの開け閉め。
そう、1日中ひたすら洗濯機のフタを開け閉めするのだ。街角の通行人調査よろしく、カウンタ片手に洗濯機の開け閉めを10回やったら、ひとつカウントする。その繰り返し。
この試験評価の目的は、言うまでも無く洗濯機の耐久性を知ること。
実はこの時代には、そういった「人手に頼る試験評価」は珍しくなかった。実際に生産を行う設備の自動化は進んでいく時代ではあったが、出来上がった製品の試験評価はと言うと、ホントに人の手を使っての作業が主だった。
またこれが、「実際のユーザーが使用する状態に最も近い」とも言われていた。
Kは思った。
「オレは、洗濯機のフタを開け閉めするためにココに来たのではない!」
そしてKは、「モーター1台で自動的にフタの開け閉めを行う機械」を設計した。当然、カウンタも付けて、開け閉めの回数も表示出来るようにした。
Kが偉かったのはその設計だけにとどまらず、製作に必要な原価を算出し自分自身の単価と比較して、いかに大きなコストダウン効果を得られるか・・・をアピールした。
ちなみに、製作に必要な原価は10万円ほどだった・・・らしい。
Kの上司は、「そんなに言うんならやってみたら」という感じでGOを出した。
それを受けてKは、自ら引いた図面を元に自分で部品を作って組み立てた。サスガに、モーターやカウンタは自分で作れないので、代理店から購入したが・・・。
その後出来上がった「試験評価用設備」は、想像した以上の出来栄えであった。他部署からそのウワサを聞きつけて、身に来る人が出るほどの・・・。
コレを見たKの上司は、現在開発を進めている新型洗濯機のプロジェクトチームにKを入れることにした。
そこでもKは、上司の期待以上の結果を出して、トントン拍子に技術者の階段を登っていった。
そして今では、押しも押されぬエース技術者の一人に成長した。
もしKが、最初に与えられた洗濯機のフタの開け閉めというシゴトに嫌気が差して、ホントにイヤイヤやっていただけだったら、どうなっていただろうか・・・?
あるいは、短気を起こして退職していたら・・・?
この世の中に、やらなくてもいいシゴトなんてない。どんなシゴトであっても、必要であるからに存在する。
そう、誰かがやらなくてはならない。
この会社も恐らく、ソコまで考えてKに試験評価をさせたワケではないと思う。その部署のスタッフが、「新人サンが来るみたいだけど、取り合えずフタの開け閉めでもやらせとこう」というノリだったのだと思う。
与えられたシゴトをどう受け止めて、どういった結果を出すか・・・。これは千差万別だ。
モノゴト自体は「幸」「不幸」の性格を持っていない。それを、どう受け止めるかはその人次第だ。(エースを狙え!より抜粋)
あっ、ちなみにココに書いた「若手技術者」とはワタシのことではありません・・。(^-^;
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コメント
はじめまして。
“技術士”というキーワードからこちらにお邪魔しました。
私も建設部門の技術士で、建設コン猿をしています。
最後のお言葉、心に響くものがありましたのでコメントさせていただきました。
投稿: akisute | 2009年7月12日 (日) 12時27分
akisuteさん、こちらこそはじめまして。
コメントありがとうございます。
最後の言葉は本文にもありますように、「エースを狙え!」という漫画からの抜粋です。(^-^;
私自身がこの漫画が大好きで、よくこのブログで使っています・・・。
投稿: Bちゃん | 2009年7月12日 (日) 13時59分